はじめに:「手で書いた方が早い」と諦めていませんか?
「ChatGPTに頼んでみたけど、なんだか当たり障りのない回答しか返ってこない」「修正する手間を考えたら、自分でやった方がマシだ」。そう感じて、AIの活用を諦めてしまった経験はありませんか?実はそれ、AIの性能の問題ではなく、私たちの「指示の出し方(プロンプト)」に、ある“日本的な”癖が影響しているかもしれません。今日は、AIとのコミュニケーションを見直すことで、あなたの「言語化能力」そのものをアップデートするお話をします。
日本人がやりがちな「ゼロショット(丸投げ)」の罠
例えば、議事録の要約を頼むとき、いきなり「この議事録を要約して」とだけ指示していませんか?専門用語で、これを「ゼロショット(Zero-shot)」と呼びます。例を示さず、指示だけを投げる方法です。
私たち日本人は、「言わなくても分かるよね」「行間を読んで」というハイコンテクストな文化で生きています。しかし、AIに「空気」は読めません。「要約して」と言われたAIは、「3行で?誰向けに?口調は?」と困惑し、結果として確率的に無難な(=つまらない)答えを返します。これは、新入社員に「とりあえず、いい感じによろしく」と丸投げして失敗させるのと、全く同じ構図なのです。
プロのテクニック:「ワンショット」と「フューショット」
では、どうすればいいのか。答えはシンプルです。AIに「背中(手本)」を見せてあげるのです。
- 【ワンショット(One-shot)】たった1つ、「理想」を見せる
「要約して」の前に、「過去の議事録の要約例はこれです」と、1つだけ見本を提示します。「日時・決定事項・ネクストアクション」といったフォーマットを一度見せるだけで、AIは「あ、このパターンを真似すればいいんですね」と瞬時に理解し、あなたの会社独自の形式で完璧な回答を返してくれます。 - 【フューショット(Few-shot)】「微妙なニュアンス」を教え込む
クレーム対応メールのような難しいタスクでは、例を2つ、3つと増やします。「配送遅延の場合」「商品不備の場合」…といくつかのパターンを見せることで、AIは「なるほど、単に謝るだけでなく、最後に必ず改善策を提案するのがこの会社の流儀なんですね」と法則を学習します。ここまでくると、AIは「新人」から「ベテラン社員」へと進化します。
まとめ:AIへの指示は、「暗黙知」を「形式知」に変える訓練
「ワンショット」や「フューショット」の考え方は、実はAIだけでなく、人間のマネジメントや業務システムの構築にも通じる本質です。「なんか違うんだよな」と部下に文句を言う前に、自分の頭の中にある「暗黙知(自分だけの感覚)」を、「形式知(具体的な例や言葉)」に変換して伝えられているか。
私たちセイユーネットワークシステムが提供するAppSheet開発も、まさにこのプロセスです。お客様の頭の中にある「業務のやり方」を丁寧にヒアリングし、言語化・構造化して、システムという形に落とし込む。AI時代だからこそ、この「言語化能力」と「定義力」が、経営の最強の武器になるのです。
このテーマを、音声でもっと深く!
ブログでは書ききれなかった「日本人がゼロショットをやりがちな理由」や「AIを自分の分身にする方法」について、ポッドキャストで熱く語っています。移動中や作業中に、ぜひお聴きください。
#4 AIへの指示、実は「丸投げ」していませんか? 〜ゼロショット・ワンショットと「暗黙知」の正体〜
- AIに「空気」は読めない。ハイコンテクスト文化の落とし穴
- 「背中を見せる」とは?ワンショット・プロンプトの具体的な作り方
- AI活用は「言語化能力」のトレーニングである

